
| 序 |
「西に長安、ひんがしに京有り」と永く詠われたこの都、何時しか
大江山の朱点童子とその郎党の鬼共により奇襲せられ、衰退の一途を辿りたり。
京に降りた鬼共、虫の息である民の輩に更に見せたり地獄絵図。
有る者は手足引き千切られ、また有る者は振り撒かれ不治の万病。
又有る一族には刻まれたり種絶・短命の呪術。
仕舞には家財奪われ、人・動物共々焼き払われ。
鬼の通った廃墟に積み上がるは只万の死屍累々。
しかし、どの様になるとも全ての生命が死滅す事はないというのが世のさだめ。
それでも死ねなかった民は是処、京で生きねばならなかった。
只、ひたすら自分とその家族の今日の糧の為に必死で生き続けた。
今日一日死ななかった事に安堵し、明日のことも有耶無耶のまま場所を探し床についた。
自分とその縄張りの周りはどうなっているか構わぬまま。
ひたすら命の細い糸を紡いでいた。
それから数年後。
京の都は徐々にではあるが復興の兆しを見せ始めた。
その中、鬼退治を生業とする一族も現れた。
民は時にその一族の生態を不可思議に思いもしたが、
自分自身も火の車に乗り生き急ぐ修羅であった為、それを疑うは未だ二の次。
当時の世は正に珍人奇人共が雑多入り乱れたる、そんな時代であった。