
| 序 |
吉川一族は朱点童子を天に葬った。
純真無垢な赤子に戻った朱点童子は、
愛しい母さまの胸に抱かれ天界へと戻っていった。
「こんな呪いなんか自分で終わりにしたい」と思っていた。
今、この時をもってその一族のささやかな望みが達成された。
「・・・もう、こんな生殺しの呪いは俺らで最後や。よかったわ。ほんま」
そういって全身の力が一瞬にして抜けたように膝をついたのは剣士のホクトだった。
「ま、一族の流れがなくなるんはしゃあないわ。なんかの英雄話みたいに
いつか一族のダレかがバァーンと!生まれ変わるンとちゃうやろか?はは」
「・・そんときは子供も産めて、普通に長生きできたらエエなァ」
そんな雑談をまとめたのは一族最後の当主、あぎらだった。
「もうええやないの。用事も済んだことやし・・・早う帰ろ」
一瞬にしてまばゆいばかりの光が差してきた。
そして何処からか、雲の上の方から神々しい女の声が聞こえてきた。
―勇者の血を引く者達よ、私の声を聞きなさい。―
その声はいつか神様が夢に出てきた時の声に似ていた。
「だ、誰やの?神さんなの?」
「・・・分からへん」
その声はさらに続いた。
―勇者の血を引く者達よ。私は今、あなた方が朱点童子の悪しき「気」を打ち払って-
―呉れたことにより、「新たなる力」を自分に得ることが出来ました。-
「新たなる力・・何やそれ・・」
―今の私の力を持ってすれば、あなた方にかけられた忌まわしき呪い、すなわち-
―「短命の呪い」そして「種絶の呪い」。そのどちらか一方を解くことができます。-
「・・え?」
「解けるんか?・・呪いが!?」
天からの声は容赦なく続いた。
―あなた方は既にこの世に生を受けている者。よって呪いのどちら一方を-
―解くことにしか生命力が耐えられません。・・しかも体力が十分に残っている者でないと-
―私の「解放の儀」を最後まで乗り切ることは出来ないでしょう。もし、それでも-
―呪いのどちらかを解くのを希望するのであれば、イツ花にその旨を伝えて下さるよう。-
余りの突然の天からのお告げに、一族は空を見上げたまま暫くの間立ち呆けてしまった。
・・・それが、始まりだった。